【O Captain! My Captain!】アメリカで有名なウォルト・ホイットマンの詩の和訳と解説

映画&文学
  • ホイットマンの最も有名な詩”O Captain! My Captain!”を読んでも意味が分からない。
  • キャプテンって誰のこと?
  • 何がいいのかわからない。

と思う方も多いのではないでしょうか?

詩はネイティブでも、苦手意識を持っている人は多く、1回で詩の内容を理解できる人は少ないと思います。

なぜなら、詩は表現がストレートでないことに加えて、比喩も用いられるからです。

また、昔の言葉や会話で聞きなれない単語も多く用いられるため、余計に難解になります。

しかし、作者のこと、当時の時代背景などを理解することで、ぐんと読みやすくなりますし、解説を読んで自分なりに消化できると楽しくなってきます。

おすすめの英語の詩は、こちらの記事でもご紹介していますので、合わせてご覧ください。

【英語圏の教養】知っておくべき有名な英語の詩【おすすめ10選】

この記事では

  • 作者のことを紹介します。
  • 原文そのまま記載します。
  • 簡単な表現でのオリジナルの和訳を記載します。
  • 簡単に独自の要約と解説をします。

小・中学校の頃、4年間アメリカのニューヨークで過ごしました。

社会人でも再びニューヨークに留学した経験から、英語の重要性、勉強方法、英語圏の文化などを記事にしています。

英語の詩はとても難解です。

ネイティブが読んでも理解できないものがほとんどなので、簡単な言葉で訳し、背景なども交えて解説したいと思います。

ウォルト・ホイットマンってどんな人?

ウォルター・ホイットマン (Walter Whitman, 1819年5月31日~1892年3月26日) は、アメリカの詩人です。

エミリー・ディキンソンと並び、19世紀のアメリカ文学への影響の最も大きい作家です。

ニューヨーク州のロングアイランドに11人兄弟の次男として生まれました。

その後にブルックリンで幼少期を過ごし、12歳で印刷の仕事を始めます。

このころに文学に対し興味を持ち、ダンテ、シェイクスピアや聖書などのから古典から独学で勉強します。

大規模火災で印刷の仕事を失ってからは17歳の若さで教師を始め、後にジャーナリストになります。

その後、編集者になるため、南部のニューオーリンズに赴任し、そこで奴隷な悲惨さを目撃したことをきっかけに奴隷制度廃止論者となります。

ジャーナリストとして活躍する傍ら、詩も書き、ホイットマンの最も有名な詩集である“Leaves of Grass”(草の葉)を自費出版します。

その後、南北戦争がはじまり、戦争の残酷さを目の当たりにし、詩にも影響を与えます。

エイブラハム・リンカーン大統領の暗殺後に書かれた、“O Captain! My Captain!”(ああ船長!わが船長!)はホイットマンの代表作となりました。

ホイットマンはそれまでの伝統的な詩の技法にとらわれずに作詩し、「自由詩の父」とも言われています。

彼の詩は、庶民に対して語り掛けるのが特徴で、多様性、人間の本来持つ力や民主主義の重要性を表す表現が随所で見られます。

“O Captain! My Captain!” 原文

O Captain! my Captain! our fearful trip is done,
The ship has weather’d every rack, the prize we sought is won,
The port is near, the bells I hear, the people all exulting,
While follow eyes the steady keel, the vessel grim and daring;
But O heart! heart! heart!
O the bleeding drops of red,
Where on the deck my Captain lies,
Fallen cold and dead.

O Captain! my Captain! rise up and hear the bells;
Rise up—for you the flag is flung—for you the bugle trills,
For you bouquets and ribbon’d wreaths—for you the shores a-crowding,
For you they call, the swaying mass, their eager faces turning;
Here Captain! dear father!
This arm beneath your head!
It is some dream that on the deck,
You’ve fallen cold and dead.

My Captain does not answer, his lips are pale and still,
My father does not feel my arm, he has no pulse nor will,
The ship is anchor’d safe and sound, its voyage closed and done,
From fearful trip the victor ship comes in with object won;
Exult O shores, and ring O bells!
But I with mournful tread,
Walk the deck my Captain lies,
Fallen cold and dead.

「ああ船長!我が船長!」和訳(オリジナル)

ああ船長!我が船長!恐ろしい旅は終わりました、
船はいくつもの嵐を抜け、求めたものは勝ち取った、
港は近く、鐘も、歓喜の声も聞こえる
皆が、この頑丈な船体を目で追っています、
なのに、ああ魂よ!魂!魂!
ああ流れる赤い血よ、
我が船長は甲板に横たわり、
冷たく命を落とすなんて

ああ船長!我が船長!立ち上がりあの鐘の音を聞いてください、
立ち上がり-あなたに向かって旗は振られ-ラッパは吹かれています、
あなたに向けて花束や花輪は贈られ、あなたのために人々は集まっています。
あなたを呼んでいます、群衆は熱狂してこちらを見ています。
ああ船長!我が父よ!
あなたの頭を支える腕!
何かの夢だ、甲板の上で
冷たく命を落とすなんて

我が船長は答えない、唇は青く開かぬまま、
我が父は私の腕を感じることもない、船長には脈も意思もない、
船は無事に錨を下ろし、航海は終わりを迎えた、
恐ろしい航海から勝利とともに戻った、
海岸の群衆よ喜べ、鐘を鳴らせ
しかし、私は重たい足取りで、
我が船長が横たわる甲板を歩く、
冷たく命を落とした我が船長が。

O Captain! My Captain!の解説

要約

数々の嵐を乗り越え、勝利を勝ち取り船は航海から港に戻ってきた。

しかし船長は死んでしまった。

船長を祝福する人々や鐘の音は鳴り響いている。

船長には、立ち上がり賞賛を受け取ってほしい。

しかし、船長は死んでしまったのでそれも叶わない。

登場人物・象徴

  • 船長:暗殺された大統領エイブラハム・リンカーンのこと
  • 語り手:ホイットマン自身、アメリカの国民
  • 船:アメリカ
  • 航海:南北戦争

時代背景

ホイットマンの生きた当時のアメリカは南北戦争の最中でした。

南北戦争とは1861年~1865年にかけて起きた、アメリカ唯一の内戦です。

そのためアメリカでは南北戦争ではなく“The Civil War”(内戦)と言われています。

戦争の発端は、工業化を進める北部と、綿花などの大規模農業を主体とし、奴隷を労働力とする南部とが対立したことです。

結果はエイブラハム・リンカーンが率いる北部が勝利し、直後に暗殺されました。

リンカーンの「奴隷解放宣言」は南北戦争当時の演説です。

考察

南北戦争で、強くアメリカを導いたリンカーンにむけて、ホイットマンから送られた詩です。

もともと奴隷制度に反対だったホイットマンはリンカーンを支持していました。

ホイットマンは「自由詩の父」と呼ばれていますが、この詩は彼の中では「型」を意識した作品です。

このことからも、リンカーンの死に敬意を払っていることがうかがえます。

最初の2つのスタンザでは、リンカーンの詩を嘆く内容となっています。

一方、3つ目のスタンザでは、船(アメリカ)はリンカーンによってもたらされた勝利によって、平和を取り戻したことを語っています。

そして、偉大な船長なき今、「この国と民主主義を先導していくのは自分自身だ」という決意で結んでいます。

まとめ

“O Captain! My Captain!”はホイットマンの詩の中で、少なくともアメリカでは最も有名な詩です。

彼の最初の詩集”Leaves of Grass”(草の葉)は、自由・民主主義・ダイバーシティを象徴するものが多く、特にアメリカ人に人気です。

元の詩を読んだだけでは、captain=リンカーンに結びつけることは不可能です。

背景を理解してから、詩を読んだほうが楽しめる典型の作品だと思います。

英語圏で特に有名な詩はこちらの記事でまとめていますので是非ご覧ください。

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