アメリカの有名小説【The Catcher in the Rye(ライ麦畑でつかまえて)】の英語と解説

映画&文学

アメリカ文学の中で特に若者に人気なのが【The Catcher in the Rye(ライ麦畑でつかまえて)】です。

日本のカルチャーの中でも、この本からの引用は多くされており、世界的に教養となっています。

【The Catcher in the Rye(ライ麦畑でつかまえて)】について

アメリカで1951年に発表された小説で、全世界で6500万部以上の売上(現在でも毎年50万部以上売れ続けている)作品です。

発表当時のアメリカでは様々な若者に影響を与え、ジョン・レノン殺害犯マーク・チャップマンの愛読書としても知られています。

アメリカでは日本では野崎孝村上春樹により翻訳されており、原作により忠実なのが 野崎孝訳で、村上春樹はより自分のエッセンスを加えているといわれています。

日本でも、伝説のロックバンドBlankey Jet Cityのボーカル浅井健一ことベンジーの愛車の名前が Salinger 号であり、曲や歌詞にも大きく影響が感じられます。

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The Catcher in the Ryeは映画化されていません。

理由は作中でもある通り、主人公のホールデンが映画嫌いであることと、作者のSalinger自身が、「ホールデンを演じることが出来るのは自分だけだ」と豪語しており、大人のSalingerが16歳のホールデンを演じるのは不可能であることから、映画化は見送られました。

J.D. Salinger

作者のJ.D. Salingerは1919年1月1日にアメリカに生まれました。

裕福なユダヤ人ルーツの家庭に育ちますが、父親には作家としての道を理解されず、幼少期から孤独感を味わいます。

作家として注目をされ始めた矢先、第二次世界大戦に従軍し、アメリカの実質的な欧州での参戦となる、ノルマンディー上陸作戦(D-DAY)にも参加しました。

過酷な戦地で、戦争の悲惨さを目の当たりにしたことで、生還後はPTSDにより精神を患います。

これを何とか克服し、書き上げたのがThe Catcher in the Ryeです。

主人公のホールデンには、Salinger自身を重ねており、最も思い入れの深い作品となっています。

作家としての成功後は、ニューハンプシャー州の山奥に移り住み、世間との距離を取りながら、執筆のみに没頭し2010年に91歳で生涯を終えました。

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登場人物

・ホールデン(Holden Caulfield)

主人公でナレーター。16歳のPenceyに通う高校生。繊細で世の中の不純なものに対し嫌悪感を表している。

・D.B

ハリウッドで作家をするホールデンの兄

・アリー(Allie)

白血病で死んだホールデンの弟 

・フィービー(Phoebe)

純粋で出来がいいホールデンの妹

・ストラドレーター(Stradlater)

寮のルームメイト、ハンサム

・サリー(Sally Hayes)

以前デートしたホールデンの女友達、美女

・ジェーン(Jane Gallagher)

おさななじみ、昔好意をよせていた

・スペンサー先生(Spencer)

退学になった高校の口うるさい歴史の先生

・アントリーニ先生(Antolini )

昔の高校の尊敬する国語教師

あらすじ

高校を退学

16歳のクリスマス前に、ホールデンは落第により退学処分となります。

スペンサー先生に挨拶に行き、寮に戻ったところでルームメートのストラドレーターが、昔好きだった女友達のジェーンとデートに行くことを知ります。それだけでなく作文の宿題をホールデンにさせようとします。

ホールデンは嫌々作文を書こうとしたものの、題材に困り、死んだ弟のアリーが使っていた野球グローブについて書きました。

デートから帰ったストラドレーターは、作文を一目見るなり内容にケチをつけました。また気になっていたジェーンとのデートについてもホールデンが聞いても答えませんでした。

これで殴り合いのけんかとなり、腹を立てたホールデンは、退寮の予定は数日後だったにもかかわらず、その晩寮を飛び出しました。

ニューヨークへの帰郷

ホールデンの実家はニューヨークにあります。

しかし、ホールデンの兄弟は兄のD.B.、死んだ弟アリー、幼い妹のフィービーまで優秀だったため、親に合わせる顔が無く、数日間街をうろつきます。

その中でいろいろな人と会話します。

  • 友人の母親
  • タクシー運転手
  • 娼婦
  • 旧友

ホールデンはいろいろと会話を試みますが、結局話を聞いてもらえなかったり、理解されなかったりと、どんどん不満が貯まります。

時間をつぶそうと、昔デートしたことのあるサリーに連絡を取り、デートに誘います。

しかし、デートでもサリーの他の男友達に遭遇するなど、なかなかホールデンの思うようにいかず、ケンカしてしまいます。

異性に関心があり、奥手ではないものの、なかなか踏み出せない、「純粋なままでいたい」というホールデンの内面も随所で垣間見れます。

フィービーと再開する

金も底をつき、酔っぱらって実家に帰ると親は留守でした。

ホールデンは幼いフィービーを起こし、退学になって帰ってきたことを悟られるも、ようやく自分の話を聞いてくれる人に出会います。

そんな中で、幼いフィービーに「ホールデンは一体何がしたいのか?何になりたいのか?」と聞かれます。

ホールデンは、「例えば、崖の上のライ麦畑で無邪気に走り回る純粋な子供たちいたとして、自分はそんな子供たちが、崖から落ちそうになったらつかまえてあげるような人になりたい。」と答えます。

その後、親が帰ってきたため、再び家を抜け出し、昔の恩師であるアントリーニ先生のもとに向かいます。

アントリーニ先生に諭され眠りにつきましたが、目を覚ますと先生がホールデンの額を触っており、不快に思ったホールデンは再び外に飛び出します。

フィービーとメリーゴーランドに乗る

ホールデンは街を出ようと決意します。

最後にフィービーに一目会おうと、フィービーを呼び出します。

約束の場所へフィービーは大荷物を持ってきて、フィービーも一緒に街を出るといいます。

ホールデンは反対しケンカになりますが、セントラルパークを歩いているうちに、だんだんと距離が縮まります。

そして、昔よく行ったメリーゴーランドにたどり着くころには仲直りし、フィービーに「メリーゴーランドに乗りなよ」と勧めます。

フィービーをメリーゴーランドに乗せ、外から見守るホールデンはたまらなく幸せな気持ちになり、家に帰ることをフィービーと約束します。

解説

ホールデンは物語の中で、すべてのことに対し“phony”(インチキ)だと、不満をあらわにして文句を言っています。

“phony”はインチキなどの訳し方がされていますが、他には「偽物」「見掛け倒し」「まがい物」などの意味も込められています。

ホールデンにとって”phony”は大人の「不純」を表現しています。

物語は終始、ホールデンは”phony”に出くわしては、ぶつぶつと文句を言っています。

また、純粋さの象徴として死んだ弟のアリーや妹のフィービーがいます。

タイトルのThe Catcher in the Ryeには、ライ麦畑で遊ぶ「純粋」な子供たちが、 「不純」で”phony”な大人堕ちるのを救う守り人になりたいという意味が込められています。

大人になりながらも、純粋でありたい気持ちが邪魔をして、うまく周囲と関わりあえない葛藤を表現した作品となっています。

なぜ有名になったのか?

全体的に派手なストリー展開はない作品で、読みづらい人にはわけがわからない作品ですが、なぜここまで有名になったのでしょうか?

ホールデンの葛藤は、若者たちにとっては特に珍しいことではなく、誰もが心の奥底に秘めている感情です。

そうした感情の代弁者となったことで、若者たちが自分の心をホールデンに重ねることが出来ました。

また、Salinger自身の葛藤をホールデンに投影していることに、世間から距離をとるSalingerの姿勢も相まって、より伝説的な作品になっています。

ライ麦畑はどこから来た?

タイトルだけ聞くと、田舎の話のように聞こえますが、ライ麦畑はどこから出てきたのでしょうか?

ライ麦畑は詩人Robert Burns のComin thro’ the Ryeというスコットランド民謡からきています。

物語ではフィービーに会う前に、子供たちが歌っているのを聞いて懐かしく思った描写があります。

ライ麦畑でつかまえてという翻訳は正しい?

野崎孝はタイトルを「ライ麦畑でつかまえて」と訳し、これに対し村上春樹は”The Catcher in the Rye”と訳しています。

確かに直訳するとcatcherは「つかまえる人」なので、「つかまえて」という表現は自分がつかまる側の人間になってしまい、原題とは異なります。

しかし訳が間違っていると考えるのは少し短絡的だと思います。

ホールデンは「自分がライ麦畑で純粋さを守る人になりたい」と言いつつも、本当は「自分が不純な大人になる前に、捕まえてほしい」と感じていたと考えられます。

そういう意味では、一歩深く読んだ訳をタイトルでしているという見方もできます。

やはり物語は、翻訳ではなく書かれた言語で読むがいいと改めて感じます。

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まとめ

原作も英語が簡単で、非常に読みやすいです。

机上で勉強していると、なかなかお目にかかれない口語のスラングはありますが、それ以外はほぼ高校生までの英語です。

スラング

  • “goddam”:畜生 くそ
  • “hell” :地獄
  • “damn”:くそ
  • “bastard”:ろくでなし
  • “crap”:くそ、たわごと
  • “chrissake”(Christ`s sake):頼むから・・・、とんでもない!
  • “sonuvabitch”(son of a bitch):くそ野郎

※スラングはだいたい「クソ」で訳せます笑

できれば高校生か大学生のうちに子供には読ませたいなと考えています。

ただ、影響力は強めの作品なのでご注意ください。

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