新型コロナウイルスの影響で、移動が制限されていますが、徐々に緩和していく流れになりそうです。
日本では民泊はいろいろな規制がありながらも、東京オリンピックをひとつの目標にかなり注目されていました。しかしコロナの影響で、ほとんどの民泊業者は大打撃を受けました。
しかし収束を見込んで再度注目されているのがAirbnb(エアービーアンドビー)です。
「エアビー」とも略されます。
読み方もちょっと難しい(知ってなきゃ読めない)ですが、民泊のプラットフォームの世界最大手です。
Airbnbは共同創業者が3名いますが、そのうち2名はデザイナーということで、デザイン・シンキングの手法が多く取り入れられています。
Airbnbが成功した裏側にある概念はなんなのか?
創業者の一人であるジョー・ゲビアのTEDをもとの紹介します。
Airbnbとは
Airbnb(エアビーアンドビー)とは、世界中に空き部屋やスペースなどを持っていて、それを提供してくれる方(ホスト)と宿泊施設を探している旅行客(ゲスト)をつなげるプラットフォームを提供しているWebサービスです。Airbnbは世界190カ国34000以上の都市で100万件以上の物件が登録されています。
Airbnb:バケーションレンタルやログハウス、ビーチハウスなどのユニークな宿泊先と体験
アメリカのサンフランシスコで2008年に誕生した会社で、共同創業者はブライアン・チェスキー(Brian Chesky)、ネイサン・ブレチャールチク(Nathan Blecharczyk)、ジョー・ゲッビア(Joe Gebbia)です。
共同創業者の3名はルームメイトであったことも有名です。
ジョー・ゲビアの創業の秘話
ジョー・ゲビアは大学でデザインを学びました。
卒業する際にガレージセールを開いていた時に、赤いマツダ車に乗った男が通りかかり、ジョーのアートを購入しました。
その後意気投合した二人は、出会ったその日に近くのパブに飲みに行きました。
すっかり盛り上がり、夜も更けたころにジョーはその男に「今日はどこに泊まるんだい?」と聞きました。
すると、男は「実はまだ決めてないんだ」と答えました。
その瞬間ジョーは、そんな質問をしたことを後悔しながら、男を自宅のリビングにエアーベッドを敷いて泊めてあげました。
ジョーは見知らぬ人が自分の家に泊まっていることを不安に思いましたが、結局問題は起こらなく、その後も仲良くやっています。見知らぬ男は教師になり、ジョーから買ったアートは教室に飾っているとのことです。
この体験が。ジョーにとって初めての人をもてなす体験となり、完全に考え方が変わりました。
子供の頃は「見知らぬ人=危険」と教わりますが、この経験を機に「見知らぬ人=まだ出会っていない友達」と考えるようになりました。
Airbnb誕生
見知らぬ人を泊める経験をした2年後に、ジョーはサンフランシスコで試練を迎えていました。
無職で、お金がなく、ルームメイトが引っ越し、家賃が上がるということが同時に起きており、ピンチを迎えていました。
そんな時に、サンフランシスコで大きなデザインのイベントがあり、街中のホテルが予約でいっぱいになっていました。
そこで、ジョーは共同創業者のブライアンと一緒に、簡単なホームページを作り、イベント期間中に自分の家に$20で泊まる人を募集しました。結果3名の人が利用し、ゲストもホストもとても楽しい時間を過ごしました。
友達を作ると同時に、家賃も貰えて、みんな楽しめるシステムを発見したと、ブライアンとジョーは盛り上がりました。
すぐに昔のルームメイトであった ネイサンも呼び、ビジネスにするため投資家に出資を依頼しました。
しかし最初は受け入れられませんでした。
誰もが「見知らぬ人=危険」のバイアスがあったからです。
信頼をデザインでつくれるか?
見知らぬ人の家に泊まるのも、見知らぬ人を泊めるのも、お互いの信頼が必要です。
しかし。ジョーたちはこれまでデザインしか学んできませんでした。
デザインで信頼をつくれるか?
ホストの体験は、例えば自分の携帯電話の暗証番号を解除し、知らない人に渡すような感覚です。
一方ゲストの感覚は、その携帯電話を預かる人の責任感と似ています。
もし、隣人と接するときに最初に自己紹介をするように、ゲストが自分の名前だけでなく、子供や犬の名前までを含めた自己紹介をしたらどうでしょうか?
そして、人からのレビューもたくさんあれば、信頼できるのではないでしょうか?
結果的に、うまくデザインされたレビューによる評判のシステムが、信頼を生むためのキーとなることが分かりました。
信頼と同質性
スタンフォード大学との共同研究で、信頼関係と同質性の相関性に関する研究が行われました。
結果、宗教、人種、同郷など、自分に似ている人ほど信頼しやすい傾向があることが分かりました。
非常に自然な社会のバイアスです。
しかし、ここでレビューによる評判の要素を追加したところ、3つ以下のレビューでは結果に変化はありませんでしたが、レビューが10を超えると、信頼に対し同質性よりも評判のほうが大きく影響するとの結果が出ました。
つまり、評判のシステムをうまく運用できれば、人間の根源的にある信頼と同質性の関係を、克服できる可能性があることが分かりました。
信頼と情報開示
信頼には情報開示の量には、適量が存在します。
少なすぎる情報開示では信頼を得られませんし、過ぎた情報開示も逆に信頼度が下がります。
例えば、最初にゲストがホストにメッセージするときに、「こんにちは」だけだともちろん信頼は得られません。しかし逆に、「私のお母さんと問題を抱えていて。。。」など行き過ぎた情報開示は、かえってホストを不安にさせて、宿泊の承諾率が下がります。
例えば、「写真の中のあなたの部屋のアートが素敵ね」など、ちょうどいいコミュニケーションが重要なのです。
そこでAirbnbではウェブ上で自己紹介のメッセージを入力する枠を、「ちょうどいい情報開示」に合わせて作成しています。
問題に発展しないのか?
ジョーはカスタマーサービスを担当していた時期がありました。
もちろんトラブルは発生します。
許可なくパーティをするゲストや、ゲストを雨の中外に追い出したホストもいました。
しかし問題が発生する確率は約1億2300万の宿泊のうち1%以下です。
ウルグアイでは、ゲストが宿泊中に心臓発作を発症しましたが、ホストはすぐさま自分の車で病院に向かい、手術では自分の血も提供し、命を救いました。
もちろんこうしたことは、すべての宿泊では起こりませんが、シェアリングエコノミーの醍醐味はこのような取引の先にあるコネクションです。
シェアリングエコノミー
シェアリングエコノミーは、自分の一部を相手を信頼して分け与えることで成り立ちます。
近年、家はプライバシーという考えのもとそれぞれが独立されてデザインされています。
もしシェアリング前提でデザイン出来たらどうなるでしょうか?
本日Airbnbのサービスだけで191か国、785,000人が見知らぬ人を泊めるか、見知らぬ人の家に泊まっています。
私たちが学校や親から教わったほど、見知らぬ人と関わることはおかしなことではないと証明されています。
デザイナーとして、デザインにより「見知らぬ人=危険」バイアスを克服できたことは、とてもうれしいことです。
もちろんデザインで世界のすべての問題が解決できるとは限りませんが、次はどんな問題を解決できるか楽しみです。
まとめ
Airbnbがデザインシンキングのお手本のように扱われるポイントはいくつかあると思います。
特に見知らぬ人のネガティブな固定概念である「危険」というイメージを、ポジティブな体験として演出することで、潜在的な需要を掘り当てています。
また、共同創業者たちはかつてのルームメイトで、デザイン・シンキングにおいて重要な心理的安全性が確保できていたことも、成功の要因とされています。
今後旅行が気兼ねなくできる状況になったら、Airbnbを海外でも使ってみたいと考えています。
他にも知っておくべき起業家のスピーチをこちらの記事でご紹介していますので是非ご覧ください。