帰国子女にはどのような印象をお持ちでしょうか?
私は小学校4年生から中学2年生をアメリカ、ニューヨークで過ごしました。
帰国後は帰国子女として、中学、高校、大学と進学し社会人も10年以上経験しています。
そんななか、帰国子女でよかったと思うことと、そうでない事をお話ししたいと思います。
- 子供をバイリンガルに育てたい
- 英語ができるとどんなメリットがあるか知りたい
- 帰国子女の苦悩を知りたい
など子供に留学させるか悩んでいる親世代や、これから留学を考える方の参考になればと思います。
バイリンガル帰国子女のメリット
英語が話せる。
英語圏の現地校に通っていれば、2年間である程度の英語力が身に付きます。
イメージとしては授業についていけるレベルです。
そして4~5年も通えば、日常会話だけでなく、授業やニュースなども含め、ストレスなく生活できるようになります。
この状態で日本に帰国すると大学卒業まで、英語には困りません。
受験勉強の間、他の生徒が必死に英語を勉強している時間を、他の教科に当てることができます。
振り返っても、これは大変よかったと思います。
志望校を決める際も、常に満点に近い点数が取れると、点数の予測が立てやすくなります。
これは私だけの自慢でなく、英語は日本の教育における一つの抜け道です。
もし幼少期に英語を学ぶ機会があった人は、かなりその後の進路の選択肢が広がります。
私は勉強が苦手でしたが、高校受験でも地域の一番手の高校に進学できましたし、大学も国公立に行くことができました。
だんだん日本も国際的になってきて、「そのうち皆が英語を話せるようになる。」とずっと言われてきましたが、いまだに変化を実感できることはなく、私の周りにもバイリンガルはあまりいません。
これから英語を学んだり、子供に学ばせても全然間に合います。
翻訳機で語学は必要なくなるといわれていますが、私はその逆だと思います。
翻訳機で世界との接点が増えれば、他国とのコミュニケーションはもっと増えます。
その際に翻訳機でしか話せない人と、言葉が実際に通じる人のどちらとビジネスをしますか?
英語が出来ても得をすることはあっても、損することは何もないと思います。
英語を学ぶにはインプットとアウトプットが重要です。
日ごろから英語字幕でのインプットを増やし、実際に人に英語で話してみると、格段に定着します。
私もアメリカ在住時は、週1で家庭教師に教わっていました。
今思えば、学校や、テレビなどでのインプットの後に気になった点を確認できたりする環境が良かったと思います。
今だとオンラインで優秀なプログラムもあるので、日本にいながら質の高い学習ができると思います。
こどもマンツーマン英会話【GABAキッズ】他人に寛容になる。
よく、アメリカ人は自己主張が強いといいますが、これは人によります。
というか本当に一人ひとりの考え方や行動が違います。
アメリカ人といってもヒスパニック、黒人、中国系、はもちろん、白人にもドイツ系、イタリア系、アイルランド系、ロシア系、ユダヤ系などがいます。
これが普通の学校のクラスメートです。
日本にいると、アメリカ人はいろんなルーツを持っているけど、結局アメリカ人でしょ?と思うかもしれませんが、意外とみんな自分の祖国のアイデンティティを持っています。
自己主張が強いと思われるのは、「察してよ…」や「空気よんでよ…」が通じない社会ではやむを得ない結果だと思います。
このように、違うことが当たり前な環境で生活すると、違う価値観に対しても受け止めることが出来るようになります。
意見が食い違っても、「自分の価値観が正しいとは限らないので、相手の話も聞いてみよう」とか「自分には思いつかないことだから、任せてみよう」といったマインドになります。
友達が増える
社会人留学をした際に、世界中から参加者が集まるカンファレンスに参加しました。
もちろん全員英語は堪能で、3か国語話せる参加者も珍しくありません。
ともに学び、語り合うには英語と異文化理解は不可欠です。
英語が話せたおかげで、世界中に友人ができました。
そうなると世界の問題が自分事に思えてきます。
親戚の住んでいる地域で地震があれば連絡するのと同じです。
イスラエルで衝突が起きるとき
世界中のコロナのニュースを聞くとき
ロシアがウクライナに進行するとき
そこに住む友人を心配し、グループチャットが賑わいます。
英語が話せると世界との距離は縮まります。
メンタルが強くなる
海外に住んでいると、英語が話せるようになって当たり前だと思うかもしれませんが、実は結構努力が必要です。
言葉が話せない外国の子供がいきなりクラスに現れたら、たとえアメリカであっても少し浮きます。
いじめられるとまではいかなくても、子供ですので普通にからかわれたりもします。
日本で日本人として暮らしていると、実感できないのが「マイノリティ」の感覚です。
マイノリティとはどんな感覚なのか?
私は小学生のころ、アメリカで友人に「任天堂は日本の会社」といっても、誰も信じてくれず、嘘つき扱いされました。
自分が合っていようが、間違っていようが、関係なく必ず負けるのがマイノリティです。
そんな環境で、毎晩遅くまで泣きながら宿題をしたり、笑われながらクラスで発表したりと、少しずつ言葉を覚え馴染んでいきました。
その時のことを考えると、当時を超える辛さはこれまでありませんでした。
大体のことは、「あの時よりはましだな」と思えるメンタルになります。
バイリンガル帰国子女のデメリット
漢字が書けない。
幼少期に英語を学んでいるということは、何かを学んでいないということで、それが漢字です。
数学や、理科、社会などは、ある程度学ぶものが違うにせよ、理論等は万国共通です。
国語ですら、文章を書くときの構成や、文学的表現など共通する部分はあるのですが、漢字だけは学ぶことが出来ないのです。
正直なところ社会人として、海外の仕事に関わらないのであれば、漢字が書けないデメリットのほうが、英語が話せるメリットを上回ります。
ホワイトボードの書記などは恐怖でしかないのですが、何とか社会人になってからの10年間、逃げ続けています。
細かいことが気にならない。
これは私だけかもしれませんが、日本のサラリーマンをするうえで致命的なのが、細かい気づかいができなく、おおざっぱなところです。
日本はおもてなしの国で、気遣いが出来る人が仕事ができる人と思われますが、一般的に言う気遣いも「相手の感じ方次第では?」と思ってしまいます。
またミスすることもあまり気になりません。
社内資料の誤字脱字をチェックする同僚の姿を見て、「社内の資料なんだから、間違ってたら謝ればいいのでは?」と思ってしまいます。
社会人になって日本企業では苦労する
英語は会社に入る際は精一杯PRします。
英語が話せる事は自己PRになり、面接をパスする可能性が上がるスキルです。
別にその会社に英語が必要なくても、喋れないよりは喋れたほうがいいでしょう。
しかし実際に入社してからは、もし会社に英語が話せる人が少ないと、他部署からも仕事の依頼が舞い込みます。
他部署を手伝って自分の評価が上がれば良いのですが、だいたいの場合、報酬は缶コーヒーです。
その分自分の評価となる仕事を横に置くので、1時間2,000円くらい請求したいですね。
あと、会社ではバイリンガルは通訳ができると思われます。
日本語が話せるからと言って、専門外の商談の仲介はできますか?
母国語でも話した内容を正確に復唱するのは、かなり難しいと思います。
通訳はかなり高等な専門技術です。
- 業界専門の知識がいる。
- メモなど訓練が必要。
- 知ってる単語が桁違い。
これらが実際に同席した商談で、プロの通訳にお目にかかった時の感想です。
はっきり言って、ただ英語が話せるだけでは無理です。
プロの通訳はあまり要約しませんし、似たような表現でも最もニュアンスの近い単語をチョイスします。
そして1分以上話した後の、長い訳でも内容を漏らしません。
そして1番驚いたのは、プロの通訳は聞き返さない事です。
意味の確認や、聞き取れなかったことの確認などが少なく、いっさい流れを止めませんでした。
はっきり言って普通のバイリンガルにハイレベルなビジネス通訳は無理です。
草野球とプロ野球くらいの差があると思って、大事な商談で通訳が必要な場合は、お金を払ってプロに依頼してください。と言いたいです。
仕事の依頼が増えるのと通訳の話もそうですが、英語に対する日本人の理解不足が原因の半分だと思います。
そしてもう半分は、英語に苦手意識のある人のコンプレックスだと思います。
英文契約書の確認や、急な専門分野以外の通訳など、半分無茶ぶりだとわかっていながらも
英語話せるんだからできるでしょ?
と依頼されます。
悪意 ありますよね?
英語のみならず、日本の会社ではスキルがない人がスキルのある人にインセンティブなしに仕事を押し付ける傾向にあります。
まとめ
帰国子女として日本で暮らしてきましたが、振り返るとやはり圧倒的にメリットのほうが大きいと感じます。
日本は豊かな国で、人口も多く(減少傾向ではありますが)日本語だけでも十分生活できます。
語学は必要があれば身に付きますし、必要が無ければ身に付きません。
日本で生きるうえで、英語は必要ないということが、今の日本で証明されています。
しかしその反面、英語が出来る人はいろいろな情報を収集出来て、世界中の人とコミュニケーションが取れるのです。
子供にも英語を早めに学んでほしいと考えています。