現代社会でストレスを避けて通ることはなかなか難しいです。
仕事、学校、家庭、交友関係など、現代人はたくさんのストレスを抱えて生きています。
しかしなぜストレスを抱えてはいけないのでしょうか?
誰がストレスを悪いものと決めたのでしょうか?
もしストレスを良いものと捉えることで、ストレスによる悪影響を無くせるとしたら?
TEDでケリー・マクゴニガルが語っているので、ご紹介します。
ケリー・マクゴニガル
ケリー・マクゴニガル(Kelly McGonigal)。米スタンフォード大学の心理学者です。
1977年生まれ、ボストン大学でBA(心理学)、BS(マスコミュニケーション)を取得した後、スタンフォード大学でヒューマニスティック医学を研究し、PhDを取得しています。
専門は健康心理学で、スタンフォード大学で最も優秀な教職員に贈られる「ウォルター・J・ゴアズ賞」をはじめ数々の賞を受賞しています。
ストレスを友達にする方法
ストレスに関するケリーの告白
過去一年でのストレスは小さかったですか?普通でしたか?それとも大きかったですか?
ほとんどの人がたくさんのストレスを感じたと答えるでしょう。
ケリーは健康心理学者で、人々を健康にするのが仕事ですが、もしかすると過去10年間、ストレスに関して自分が教えてきたことは、人々を不健康にしてきたのではないかと、考えるようになりました。
これまでずっとストレスは万病の元であると考え、ストレスは敵だと教えてきました。
しかし、ある研究をきっかけに、ストレスに対する考え方が大きく変わったのです。
ストレスの研究
アメリカで成人30000人を対象に8年間の研究を行いました。
研究は昨年どれくらいのストレスを感じましたか?という質問から入ります。
また、同時にストレスは健康に害がありますか?という質問もします。
その後、死亡記録を見て、誰が死んだか調べます。
結果、過去1年で多くのストレスを感じた人は、感じていない人より死ぬ確率が43%も高いことがわかりました。
ただし、これはストレスが健康に害があるとも答えた人の数値です。
一方で、多くのストレスを感じたが、ストレスが健康に害があると感じていない人は、最も死亡するリスクが低いという結果が出ました。
この研究の統計をアメリカの人口に当てはめるて試算すると、同じ8年の期間で182,000人の死因は「ストレスが健康に害があると思っている」ことになります。この数はアメリカの死因の15番目に入り、エイズ、皮膚がん、殺人より上位に来ます。
ケリーはそれまでストレスが体に悪いと、ずっと伝えてきたのに、この研究結果を見て愕然としました。
ストレスへの考え方を変えれば健康になるのか?
化学はこの問いに対し、YESと答えています。
もしストレスについての意識を変えることが出来れば、ストレスに対しての体の反応も変わります。
実験ではあらゆる手を使って、あなたにストレスを与えます。
例えば、自分の欠点に対しての5分間のスピーチをステージ上で行います。発表相手はずっと腕を組みため息をつくなど失礼な態度をとります。
つぎに算数の暗算問題を解かせ、急かしたりバカにしたりします。
もし本当にあなたがこの実験の被験者なら、相当ストレスが溜まっています。
心臓の鼓動は早くなり、呼吸も浅くなります。汗もかくでしょう。
通常はこのような状態を、「不安を感じている」と自覚すると思います。
しかし、もし同じ状態を、自分の体が「力を振り絞って、困難に立ち向かおうとしている」と捉えたらどうでしょうか?
ハーバード大学で行われたこの実験では、被験者はまさに実験前にこのように伝えられていました。
早い鼓動はすぐ動けるようにするため準備、浅い呼吸は、脳に酸素を送るため、と伝えられたことで被験者たちのストレスと不安は減り、より自信を持つようになりました。
そして何より、実際の体のストレスへの反応にも変化がありました。
通常ストレスを感じると血管が収縮します。
この状態が長く続くことは不健康です。
しかし、ストレスが役に立つと教わった被験者は、鼓動は早くなったものの、血管はストレス下でも収縮しませんでした。
この状態は喜びを感じているときや、勇気を感じているときに見られる現象です。
これはもしかすると、50歳で心臓発作で死ぬ人と、90歳まで元気に過ごす人の生物的な違いかもしれません。
つまり、どのようにストレスについて考えるかは、健康に影響することが分かります。
そのため、ストレスを無くすのではなく、ストレスとのうまく付き合う方法を教えるのがケリーの目標に変わりました。
ストレスを感じたときは、ストレスが自分が困難に立ち向かう際に鼓舞してくれていると考えましょう。
ストレスは人を社交的にさせる
ストレスを理解するために、ストレスを感じたときに分泌されるホルモンであるオキシトシンの話をします。
オキシトシンの効果はすでに有名で、ハグした時に分泌されるホルモンとしても知られています。
オキシトシンは、身近な人との関係性をより強固にしようと働き、友達や家族との接触を増やそうとします。
それだけでなく、共感しやすくするよう働き、身近な人を助けようとします。
しかしあまり知られていないのが、オキシトシンはストレスで生じるホルモンだということです。
ストレスを感じるとアドレナリンが分泌され、心臓の鼓動を早めるのと同時に、オキシトシンを分泌し、周りに助けを求めるように、体に働きかけます。
これは。人間がお互いを助け合うための生理的現象です。
人生でつらい時、ストレスは、自分の身近な人に助けてもらうように働く仕組みになっているのです。
また、オキシトシンは脳に働くだけでなく、体にも働きかけ、ストレスによる血管への悪影響を減らそうとします。
それだけでなく、心臓にはオキシトシンに反応し、ストレスによる心臓へのダメージを軽減する作用もあります。
このストレスによるホルモンは心臓を強くするのです。
そしてこのようなオキシトシンによる効果は、周りの人との接触やサポートで増幅します。
もし、自分が困っているときに助けてもらったり、困っている人を助けると、より健康で強くなります。
私たちの体は、ストレスに対し自動で反発し、強くなる仕組みが備わっているのです。
そしてその仕組みは人と人のつながりなのです。
もう一つの研究
34歳から93歳の成人1000人を対象に行った研究です。
初めに「昨年どれほどのストレスを経験しましたか?」と質問します。
また同時に「どれだけ友人、近所の人、自分のコミュニティの人を助けましたか?」とも尋ねました。
そして5年後、公式の死亡記録をもとに誰が死んだかを調べました。
悪い結果は、金銭トラブルや家庭の問題を抱える人は、30%死ぬ確率が上がりました。
しかし、他に人を気にかけ、助ける人からは、ストレスに関連するような死因は1件も確認できませんでした。
このことからも、ストレスをどう捉え、どう対応するかで人生は変わります。
ストレスは自分が直面する困難を、必ず乗り越えられると、心臓の鼓動を早くすることで勇気づけると同時に、その困難にはひとりで立ち向かうのではなく、「仲間を頼っていいよ」と教えてくれるのです。
まとめ
TEDの中でも好きなトークの一つです。
日常的に感じるストレスもポジティブなものに考えることが出来るきっかけになりますし、人とのつながりが、幸せで健康な人生を送るための秘訣であることは、ほかの研究でも証明されています。
明日も多くのストレスを感じるでしょうが、前向きに挑んでいきたいと思います。
TEDはこのような人生の価値観が変わるような研究成果を見ることができます。
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