アメリカの有名な詩に”The Tyger” という作品があります。
ウィリアム・ブレイクというイギリスの詩人の作品ですが、英語圏では非常に有名です。
アメリカで流行ったドラマの“The Mentalist”でも、主人公の宿敵の殺人鬼が、この詩を口にしています。
この記事では、この”The Tyger”について、解説していきます。
おすすめの英語の詩は、こちらの記事でもご紹介していますので、合わせてご覧ください。
【英語圏の教養】知っておくべき有名な英語の詩【おすすめ10選】
小・中学校の頃、4年間アメリカのニューヨークで過ごしました。
社会人でも再びニューヨークに留学した経験から、英語の重要性、勉強方法、英語圏の文化などを記事にしています。
英語の詩はとても難解です。
ネイティブが読んでも理解できないものがほとんどなので、簡単な言葉で訳し、背景なども交えて解説したいと思います。
ウィリアム・ブレイク
ウィリアム・ブレイク(William Blake、1757年11月28日 – 1827年8月12日)はイギリスの詩人です。
ロンドンの靴下商人の第3子として育ちました。
美術の才能を幼少期から発揮し、銅版画家、挿絵画家として生計を立てるようになった後に、作詞をするようになったようです。
最も有名な詩集は『無垢と経験の歌』(The Songs of Innocence and of Experience)で、その中でも最も人気なのが、この記事で解説する“The Tyger”というわけです。
ウィリアム・ブレイクは、キリスト教でありますが、独自の宗教的な思想を持ち、作品でも表現しています。
The Tyger原文
The Tyger Tyger Tyger, burning bright, In the forests of the night; What immortal hand or eye, Could frame thy fearful symmetry? In what distant deeps or skies. Burnt the fire of thine eyes? On what wings dare he aspire? What the hand, dare seize the fire? And what shoulder, & what art, Could twist the sinews of thy heart? And when thy heart began to beat, What dread hand? & what dread feet? What the hammer? what the chain, In what furnace was thy brain? What the anvil? what dread grasp, Dare its deadly terrors clasp! When the stars threw down their spears And water’d heaven with their tears: Did he smile his work to see? Did he who made the Lamb make thee? Tyger Tyger burning bright, In the forests of the night: What immortal hand or eye, Dare frame thy fearful symmetry?
以下の英語がわかると読みやすくなります。
- thou:汝は、汝が(主格)
- thy:汝の (所有格:所有限定詞)
- thee:汝に、そなたに (目的格)
「you / your / you / 」の古く堅い表現です。
The Tyger和訳
虎 虎よ、虎よ、明々と燃えている虎よ 夜の森で 不滅の手が、眼が、 お前の恐ろしい姿を造ったのか? どれほど深く、もしくは空高くから、 お前の眼は燃えていたのであるか? お前を造った者は、どんな翼で天に昇り、 どんな手であの火をつかんだのか? そして、どんな肩が、どんな技が、 お前の心臓をねじったのか? お前の心臓が鼓動し始めたとき、 どんな手、足をつかったのか? どんな金槌?どんな鎖が? どんな炉がお前の脳を造ったのか? どんな鉄床が?そしてどんな留め金が、 お前の恐ろしい考えを把握できたのか? 星たちがやりを地上に放ち、 その涙で天を覆いつくしたとき、 彼はお前をみて微笑んだのか? 子羊を造った彼が、お前も造ったのか? 虎よ、虎よ、明々と燃えている虎よ 夜の森で 不滅の手が、眼が、 お前の恐ろしい姿を造ったのか?
解説
意味が分からない…
意味は分かっても、何がいいのかわからない…
という方が多いのではないのでしょうか?
この詩は、タイトルは「虎」ですが、「虎を創造した者」、つまり神の話です。
この詩を要約すると、この一節で説明ができます。
子羊を造った彼が、お前も造ったのか?
- 子羊=無垢、自己犠牲、キリスト
- 彼 =神、創造主
- お前=虎、凶悪なもの、恐怖
「キリスト(無垢で自己犠牲の象徴)を造った神と、虎のように凶悪なものを造った神は同じなのか…」
ということになります。
そして、この”The Tyger”という詩は、実は対になるもう一つの詩があります。
その名も“The Lamb”(子羊)です。
対の詩”The Lamb”原文
The Lamb Little lamb, who made thee? Does thou know who made thee, Gave thee life, and bid thee feed By the stream and o'er the mead; Gave thee clothing of delight, Softest clothing, woolly, bright; Gave thee such a tender voice, Making all the vales rejoice? Little lamb, who made thee? Does thou know who made thee? Little lamb, I'll tell thee; Little lamb, I'll tell thee: He is called by thy name, For He calls Himself a Lamb. He is meek, and He is mild, He became a little child. I a child, and thou a lamb, We are called by His name. Little lamb, God bless thee! Little lamb, God bless thee!
対の詩”The Lamb”和訳
子羊 小さな子羊 誰がお前を作ったのか? 誰がお前に息を吹き込んだのか? 小川や野原を歩き回り 誰がお前に やわらかい毛皮を着せたのか? 誰が谷に響き渡るような 優しい声を与えたのか? 小さな子羊 誰がお前を作ったのか? 小さな子羊、教えてあげよう 小さな子羊、教えてあげよう お前の名前で呼ばれてる 彼こそがお前を作ったのだ 彼はおとなしく優しく 小さな子供になった 私は子供 お前は子羊 私たちはみな彼の子供 小さな子羊、神のご加護がありますように 小さな子羊、神のご加護がありますように
対の詩”The Lamb”解説
“The Lamb”は”The Tyger”より前に書かれた詩です。
“The Lamb”の最初のスタンザでは話し手の子供が、子羊に質問を投げかけています。
「誰がお前をそんなにかわいく作ったのか知ってるかい?」
2つめのスタンザでは、より思想が表現されます。
”The Tyger”と同様、Lambはイエス・キリストのことです。
聖書でもイエス・キリストは子羊と表現されています。
つまり
「子羊よ、お前を造ったのは、お前と同じ子羊の名を持つイエス・キリストだよ」
となります。
まとめ
“The Tyger”は“The Lamb”が前提に書かれた作品です。
“The Lamb”で、神は子羊のような無垢で優しい「もの」を創造する一方で、”The Tyger”では神は「虎」のような邪悪で凶暴なものも造る、2つの顔を持っていることを、ブレイクは伝えたいのです。
この詩が書かれた当時は産業革命の真っ只中でした。
資本主義の浸透により、人間がどれだけ強欲で残酷になれるかが表面化した時代であったため、これに対する問題提起や、人間の2面性に対する恐怖を表現している詩とも言われています。
英語の詩を読むためには、ただ英単語の意味を知るだけでは足りず、文化や歴史まで知る必要があります。
そのため、詩を理解することはネイティブにも簡単ではありません。
英語の詩を楽しめるようになると、国際人としてレベルが上がること間違いなしです。
英語圏で特に有名な詩はこちらの記事でまとめていますので是非ご覧ください。